ユクは丸くなって寝ていることが多い。とぐろを巻くように寝ている。
童謡にある通り、丸くなって寝るのは猫の特徴であると思い込んでいた。ユクが特別な寝方をしているのではなく、犬の寝方としてよくある形のようだ。
これはなかなか合理的な形だ。
自らの弱点である、腹をしっかり隠せるし、熱を逃がすこともないだろう。頭は完全に隠しているわけではなく、巻いた状態のまま、目を開ければ辺りの様子をうかがうこともできる。しかも、リラックスしているようで、実はこの態勢から、サッと立ち上がることもできる。居合の達人が正座の状態から立ち上がり太刀を構えるように見事だ。隣で一緒に座っていても、こちらが動き出すと、ササッと立ち上がる。人間よりも先に構えは完了しているほどだ。
もっと気を抜いて寝れば、と思うが、気を張ったまま寝ていることが多いようだ。遺伝子がそうさせているのか、野良犬生活の名残りなのか。
SNSで愛犬家の方々の投稿を見るようになってはじめて、ヘソ天という言葉を知った。こちらも寝る形を表している。へそを天井に向けて寝ている、ということを略しているらしい。もちろん、これは犬に限ったことではなく、人でも猫でもハムスターでも行う形であろう。
ユクがヘソ天をするタイミングはさまざまだ。巻いていたけれど徐々にお腹の側が暑くなり、風を入れたくなったのか、ヘソ天。ちょっとかまってくださいな、お腹を撫でてくださいな、という感じでヘソ天。お腹をストレッチついでにヘソ天。と、あらゆる場面でヘソ天を行う。弱点であるお腹を見せて寝ているのは、安心してくれているようで、こちらとしてはうれしい。
犬の可愛いヘソ天を覗き込んで、お腹を撫でてやったり、間抜けな顔を見て笑ったりしていると、ブシュッとつばきたっぷりのくしゃみを顔面に浴びせられることがある。顔の前で思い切りくしゃみをするなど、人の世界では許されない行為であるが、犬の世界では普通のことのようだ。
犬のヘソ天の周りでは笑いが絶えない。