ユクと初めて散歩したときに行ったお寺がある。そのお寺は近所で、今でもよく行く散歩コースでもある。
寺の門前に少し見上げる程度の階段があって、ユクと駆け上がり競争をすることになっている。なぜかユクは階段を見ると駆け上がりたがる。階段の上にでも暮らしていたのだろうか。
夕刻の散歩では、お寺の門はすでに閉まっていることが多い。閉じた門の前で、階段の一番上に腰掛けて、ユクとゆっくり暮れなずむ風景を眺めるのが好きだ。蚊のいる季節でなければ、そこは大変気持ち良い。高いところにいて、相手と距離があるからか、他の犬が通りかかっても、ユクは落ち着いている。なので、ゆっくりと一緒に座っていられる。
階段の下で、門に向かって手を合わせる人がいる。ユクはすました顔をしているが、ユクに対して手を合わせているのではない。当たり前だ。目の前で手を合わせていただくと、大変申し訳ない気分になる。お邪魔してすみません。
しかし、こんな風にも想像する。
自分とユクはもうあの世に行っていて、いつも気に入って座っていたお寺の門前に還ってきているのだ、と。そんな幽霊気分に浸るのだ。だとすれば、手を合わされたとしても仕方ない。
将来、ユクがあの世で道に迷ったら、ここに来て欲しい。
ここで逢おう!ユク坊。