北鎌倉から鎌倉方面の線路は東西に真っ直ぐだ。つまり、線路に沿う道路を歩くと、うちからは西へ向かうことになる。日の長いこの季節、しばし西陽を浴びながら歩かざるをえない。そうなると心配なのはアスファルトで舗装された地面の温度だ。地に近い犬はそ…
ユクは毎日何かしらの笑いを提供してくれる。犬は笑わせようなどという作為がないため、余計におもしろい。真面目に取り組んでいるところを笑うのは申し訳ないとも思うが、笑いとはそういうものでもあろう。 何をニヤニヤしているのだおぬしは。 ユクのため…
その日の夜、私は柔術の道場に行かねばならなかった。予定が確定しているものだから、遅めに散歩に出かけて、というような時間的な余裕もない。人間の夜の都合に合わせて犬の散歩を終わらせておかねばならなかった。今週梅雨入りをし、その日も雨がちなお天…
日曜日。ユクが鎌倉方面に向かった。六月はあじさい目当ての観光客も多くなるので、出発が遅くなる。午後四時半を過ぎれば人の流れは少し落ち着いてくる。お寺が閉まり始めるからだ。午後六時ともなれば、北鎌倉の線路脇は誰も歩いていない。そのさまは緊急…
あと半年の命なら何をやめますか?と言う質問がとある本に書いてあった。私はしばらく考えてみた。 あまり考えていない顔。 出てきた答えは「特になし」だった。明日死ぬなら話は別だが、半年先ならすべて今のままでよい。この答えから察するに、私の人生の…